再逢  小指の約束

日髙支配人からしたら、新しく雇った
従業員の1人であり、当たり前の事を
しているだけなんだと思う。


‥‥いい加減変わらないといけないのは、私の方だ。

自分の中に鈴子として生きた人生が
あるのは変えられない。

だけど私の勝手な思いに支配人は
全く関係ない‥‥。


「すみません。仕事に対して迷いが
 ありましたが、もう大丈夫です。」

『無理をしなくても‥』

「いえ、もう大丈夫になりました。」

小さく深呼吸をしてから、もう一度
支配人を見上げ、笑顔を向けた。


私は鳥山 叶香としての自分で
生きていない‥‥。

前世で、後悔が残る生き方をして、
卑屈になったり、臆病だったりして
逃げてきたこともあったけど、それは
鈴子であって私じゃない。


‥‥こんな簡単な事を忘れてたなんて、
情けないけど、今からでもきっと遅くないはず‥‥。


『‥‥‥‥』


支配人に頭を下げると、片付けをして
から橘さんが待つ部屋の方へと向かった