再逢  小指の約束

両肩に触れた手に、心臓が一段と大きく
ハネてしまい、苦しくなって慌てて
支配人から離れた。

『見た目と中身のギャップの差が
 激しい。‥‥清掃チームならいいが、
 今のままでは表に立つのは厳しい
 のは分かるか?』

「‥‥はい。」

少し低いその声に、この後もキツイ
言葉を言われるのがもう分かってしまう


同じ言葉でも、どうでもいい社員に
言われるのと目の前のこの人に言われる
のとでは天と地ほど違う‥‥

どうしよう‥‥せっかく雇ってもらえた
のに向いてないから辞めろと言われたら
‥‥かなりツラいかも‥‥


『ホテリエとして表で働きたいなら、
 常に精神を乱さず慌てず、どんな
 人にも不安を与える仕草や態度を
 出さない事が第一条件になる。
 ‥‥‥‥何か不安な事があるなら
 話なら聞ける。どうする?』


えっ?


身構えて手に力が入って俯いていた
私は、急に声色が穏やかになった
支配人を静かに見上げた。


‥‥‥切れ長だけど、なんてまつ毛が
長いんだろう‥‥

吸い込まれそうなビー玉のような瞳
に見つめられ、鈴子の思いが膨らん
だが、この人は圭吾さんじゃない‥‥


真剣に教えてくれていたのに、
公私混同をしていたのは、私だ‥‥。