翌日、いつものように図書室で昼休みを過ごしていた。

小説の文字を目で追っていると、視界の端に茜部先輩の姿が映る。

席に着いて、勉強かな。

軽く眺めていると目が合う。


目を逸らそうとしない。


「それ、いいよな」

「小説、ですか?」

「俺も読んだ」


少しだけ、優しく微笑んだ気がした。

心臓がうねった感触がした。


茜部先輩は手元の教科書に目線を戻して、私も小説に目を戻す。

だけど内容が上手く入ってこない。


茜部先輩のあの微笑みが、頭を占拠した。