17時半、図書室が閉まる。

外は既に薄暗く、肌寒い。


「お前家どこ」

「徒歩20分です」

「ふーん」


聞いてきた割に、興味は無さそう。

茜部先輩の質問の意図は分からないまま、2人で校門へ。


「帰るぞ」

「…はい、帰りますよ?勿論」

「送るって意味だ」

「え?」


顔色ひとつ変えずに、茜部先輩は言った。


「小学生じゃないんですから」


そう笑うと、茜部先輩は流し目でこちらに目をやり、


「送りたいだけだ」


と言った。


断る理由もなく、私は茜部先輩の横を歩き、帰路につく。

スラックスのポケットに手を入れて歩く茜部先輩は、何か話してくるわけでもない。


ただ歩くだけ。

ただ送るだけ。


「あの…ここです」

「そう。じゃあ」


そして茜部先輩は来た道を戻る。


「え、先輩?」


振り返って


「何」


と茜部先輩。


「電車通学ですか?」

「そうだけど」

「1人で帰れます!大丈夫です!」

「…何で」

「先輩にご足労おかけするには…」


めんどくさ、という顔をした。


「したいからするだけだ。おつかれ」


私の返事なんて聞く気はないようで、そのままスタスタと駅までの道を歩いてしまった。