胡桃は俺の横を歩きながら、ちらちら…時折じーっと見つめてくる。


「何?」

「えっ」


怪訝そうな俺の顔に、怯えた胡桃。


「俺の顔になんかついてる?」

「いや、なんでもないです」


しばらく歩くと、


「家ここです」


と立ち止まる。


「ん、じゃ」

「お疲れ様です。ありがとうございました」

「おつかれ」


そう返して、駅に向かって回れ右。


「先輩」

「何」

「家こっちの方じゃないんですか?」

「電車通学だけど」

「これからは送ってもらわなくても、大丈夫です」


胡桃は遠慮がちに言った。

あー、分からず屋だな。

呆れる。


目線を胡桃から逸らして溜め息をつく。


「毎週送る。なんかあってから後悔したくない」

「いや、でも…」

「年上の言うこと聞けないわけ?」


そう言うと胡桃は下を向いて、返事に困っていた。


「異論は認めない。じゃあ、おつかれ」


胡桃の答えを聞く前に、歩き出した。