17時半になり、職員室に図書室の鍵を返却し、帰宅することになる。
外はもう薄暗い。
別にさっきの笑顔に負けたわけじゃない。
ただ、先輩として、心配になっただけだった。
「胡桃だっけ」
「はい」
昇降口で声をかける。
「最寄り駅どこ」
「最寄り駅?学校のですか?」
「ちげーよ、お前の家のだよ」
天然かよ。
「徒歩圏内ですよ、電車とかバスは使ってないです」
「そう。…遅いから送る」
そう、ただ心配なだけ。
小柄で弱そうな、例えるならハムスターみたいな後輩を、1人夜道を歩かせるのが心配になっただけ。
胡桃はポカンとして、
「いやいや、近所だから大丈夫ですって」
「徒歩何分」
「20分、くらいですかね」
「そんな近所じゃねーじゃん。…ほら、どっちだ?行くぞ」
半ば強引に、胡桃を送ることにした。



