放課後、HRが長引いて俺は慌てて図書室へ向かっていた。

さっき、あいつに本の貸し借りのやり方を教えていないことに気付いて、まずいと。


予想通り、図書室の受付で、胡桃はワタワタしていた。

スクバを置いて、


「何年何組ですか?」


生徒に声をかける。


「3年2組の佐藤志穂です」

「分かりました」


名簿のファイルをめくり、バーコードをスキャン。

貸し借りの手続きを終わらせた。


「ありがとうございましたー」


図書室を後にする背中にそう声をかけた。


「あのっ…すみません」


胡桃が、ぺこりぺこりと小さく頭を何度か下げてくる。


「いや悪い、やり方教えてなかったし、来るのも遅かったから。やり方教える」


なるべく分かりやすく、丁寧に教えたつもり。


「返却された本は、ある程度溜まったら人の具合見て片付ける」

「はい」

「毎週の業務は一応そんくらい」

「分かりました、ありがとうございます」


放課後は、17時半まで図書室を解放している。

この日は5人程が返却、10人程が借りていった。


「普段このくらいですか?」

「まあ、こんくらい。多い時は多いし、少ない時は少ない」

「そうなんですね」


俺の調子に慣れてきたのか、胡桃はオドオドしなくなり、優しい雰囲気でニコニコするようになってきた。