「琴葉!だいじょ…」
胡桃の彼氏の声で我に返り、唇を離す。
案の定ビンタを食らう。
「いった…」
「どういうつもりだ」
「胡桃のこと好きだって、伝えた」
彼氏は顔を歪めた。
「現に、胡桃だって俺のキス、拒んだか?」
彼氏は黙り込んだ。
慌てて胡桃は、
「いやそれは、頭回ってなかっただけでっ…その…」
と、言っていた。
彼氏は拳を握り震わせていた。
「涼くん、あのね」
「なに」
「…っ」
目の前で、思っていたことを伝え合っていた。
俺がいることなど、気にすることなく。
本当に、俺にはチャンスなんて無かったんだな。
諦めてやるよ、胡桃のために。
俺は、お前の幸せ願うことしかできねぇよ。
「で、先輩はどうしますかね」
「ふっ、悪かったよ。俺もう、付け入る隙ないわ。はいはい引きますよー。胡桃のクラスには、保健室で休んでるって伝えとくわ、無理すんなよ」
俺は保健室を後にした。



