11月。

文化祭が始まる。

クラスの出し物には特に興味がなく、委員会のビブリオバトルには参加していた。

文化祭終了間近、職員室方面に用があり、ウロウロとしていた時だった。


胡桃がぐったりして、彼氏にお姫様抱っこされているのが目に入った。


「どこだー、保健室…」


少し特殊な造りのこの学校で、他校生が保健室を見つけられるわけがない。

…はあ。

もう、当番以外で胡桃に関わる気はなかったのに。

俺は胡桃を抱き上げた。


「茜部先輩…何するんですか?」

「保健室、どうせ在校生いないと入れないし」

「だからって、琴葉のことお姫様抱っこする必要ないじゃないですか」


怪訝な眼差しに


「…お前は用無しってことだよ」


と言った。


諦めたくないと、思ってしまった。