17時半になり、図書室を後にする。
「今日から彼氏が送るんだっけ?」
「はい!」
「まあ、途中まで一緒だけどな」
「そうですね」
校門を出ると、私服姿の胡桃の彼氏がいる。
俺の姿に気付くと、あからさまな不機嫌フェイスになる。
「…琴葉のこと、送らなくていいって言ったと思うのですが?」
ちょっと遊んでやろ。
「ああ、あの発言生きてたんだ」
かちん、と音が聞こえそうなくらい、彼氏は俺をじっと見つめる。
「別に、俺電車通学だから、途中まで方向同じなだけなんだけど」
彼氏はキョトンとした。
「誰も送るなんて言ってねーぞ」
悔しげに頬を引き攣らせる彼氏に、フッと笑う。
「帰ろ、琴葉」
「え、あ、うん」
後ろを歩き、特に何も言うことなく駅へ向かった。
はあ、終わりか。
俺の気持ちは、届くことなく、消えるんだな。



