ミアに距離を詰められると彼女が身に纏っているドレスや装飾品が自分の物よりも更に豪華なことに気付くと冷水を浴びせられたかのように浮かれていた気持ちは弾け飛ぶ。
(……ああ、やっぱりわたしは期待されていないのね)
いつもそうだ。両親は必ずと言っていい程にわたしとミアの物に差を付ける。だからわたしは彼女が持っている物よりも高価な物は持っていないし、仮にわたしが珍しい物を手にしてもミアが欲しがればリリーがどれだけ大事にしている物であろうとも譲るように両親に言われて奪われた。
たとえそれが幼少期の頃から慣れしたんできた絵本だとか、本を読む差際に愛用している栞だとかそういう何気ない、けれども日常を確かに彩る大切な物を決まってミアは狙って強請る。
耐えきれずにどうしてそんなことをするのか、と問い詰めると『わたくしお姉様のことが大好きですからついお姉様の持ち物を欲しがってしまいますの』と嘯く始末。
おかげでリリーは物を与えられたとしても、何時ミアに明け渡しても良いようになるべく愛着を持たないようにした。こうすることで自分の心を守っていたのだ。
しかしドレスに浮かれているさまを見られたとなると、このドレスもきっとミアの手に渡ることだろう。
「お姉様のドレス……素敵ですこと」
「そうかしら?」
「ええ。質素で清廉で歩きやすそうなドレスは本当にお姉様にはお似合いですわ。わたくしのドレスはほら色は同じ白でも真珠が幾重にも縫い付けられていて、着ているだけでも重たくて仕方ないわ」
つまりミアはリリーのドレスが地味でわたしにお似合いだと揶揄しているのだ。
(……これだからミアに会いたくなんかないのに)
会えば必ず嫌味を言う妹を誰が好もうか。なるべくして避けるように生活しているのに、何故か遭遇を重ねる彼女のことがリリーは苦手であった。
下手に何か話してまた揚げ足を取られるくらいならばとだんまりを決め込むリリーにミアは眉間に皺を寄せる。
持っていた扇をバサリと広げ悠々と仰ぐのは単に苛立ちを誤魔化す為だろう。
緊迫する空気の中、リリーを救ったのは出発の知らせにやってきた若いメイドの声であった。
