今日は、近道して帰ろうか

とりあえず歩き出す。

いつもの岐路。

遠回りの行先も決まってないのに、別のことばかりが頭の中を占領する。



「ねぇ椿」

「ん?」

「椿って、好きな人いるの?」



"いない"って返ってくると思っていた。

だって、毎日私と一緒に帰るから。

淡々と、その声になんのブレもなく。

"いない"って言うと、思っていた。



「急になんだよ」



少し上擦ったその声に、胸がドクンとざわめく。



「ただ、気になって」

いや、そんな、まさか。




「...................んー、まぁ、人並みに」




いつもより、小さな声で。

初めて聞くような、そんな声色で。



「そっか........」

「そっちは?」

「........私はいないよ」

「ふーん」



なんとなく、椿の顔が見れなくて、私はずっと遠くばかりを見ていた。


人並みに、ってことは、好きな人、いるんだ。


そっか。

そっか。