「え、椿も過去に戻ったことあるの?!」
「牡丹もあんの?!」
「そりゃあもう、何回も」
月日は流れ、私たちは社会人5年目を迎えた。
高校卒業から10年以上経って、初めて知ることもある。
同じ名字になって、もう1年が経つ。
式を間近に控え、式場からの帰り道に、二人で思い出を振り返っていたら、驚きの事実を知ったのだ。
「椿が私の病気を早期発見出来たのって、そういうことだったんだ.....」
「........牡丹があの日泣いてたのって、そういう理由だったのか」
過去の点と点が線になっていくような、不思議な感覚。
「牡丹のそれ、夢なんじゃないの?」
「椿こそ」
お互いに信じられなくて、夢のような気がしてるけど、あの出来事は間違いなく現実で。
そうじゃなきゃ、きっと違う未来を迎えていた。
「「不思議だね(な)」」
二人で一緒に声を重ねながら、夕暮れの道を歩く。
不思議、だけど、だからこそ。
今という時間が奇跡なんだと実感する。
そして、きっともう、過去に戻るなんて奇跡は起きないから。
後悔しないように、これからも生きていかなきゃいけないんだ。
同じことを考えていたんだろう。
黙っていた椿が、「牡丹」と私の名前を呼ぶ。
「これからも、ずっと、よろしくな」
顔が赤く見えるのは、夕日のせいってことにしといてあげよう。
「私の方こそ、ずっとずっと、よろしくね」
大好きな人と。
夕暮れの帰り道。
「ねぇ、椿。
今日は、近道して帰ろうよ」
そして、今夜は鍋でもしながら、
手を繋いで、一緒に寝よう。
これから先もずっと、一緒にいよう。



