今日は、近道して帰ろうか







「椿!!」

「牡丹っ」



椿の側まで近づいて名を呼ぶと、大きな背の彼は振り返った。



「ちょっとごめん」



そう言って、女子たちの中から抜け出した椿が、私の目の前までやってくる。



「あの、あのねっ」



言わなきゃ。

遠回りして帰ろうって。

今日が、椿と遠回りできる最後の日だから。



「あの、椿.......」

「花野井先輩!椿先輩と並んでるとこ写真撮ってもいいですか?!」

「え?」



椿を取り囲んでいた女子たちの輪がいつの間に動いたのか。

私も含めて囲まれている。

そして、謎の提案をされている。



「ずっと、お二人のファンで!!一緒にいるお写真が欲しくて......!!」

「え、あ、は、はい?」



ん?あれ?

この子達、椿のファンなんじゃないの?

お二人?

お二人って私と椿のこと?



「ごめん牡丹。牡丹と一緒にいる写真が欲しいって言われて断ってたんだけど........」



隣で困った様子の椿が、私になぜか謝っている。



「えっと、1枚なら私は全然構わないけど...........」

「ありがとうございますっ!!」



そうして、なぜかわからないけど、私と椿のツーショットを1枚撮った女の子たちは、あの長蛇の列が嘘だったかのように、一瞬でいなくなった。



「.............なんだったの?」

「さぁ......?」



困惑している私たちだけが取り残されている。

って、そんな場合じゃなかった。



「あのさ!椿!!」



今日は、遠回りして帰ろうよっ。