今日は、近道して帰ろうか

「牡丹ちゃん」

「あ、おかえりなさい」



泣かないようにと天井を仰いでいると、背後から名前を呼ばれ、振り返ると椿のお母さんがいた。



「見ててくれてありがとね。あとそこに、飲み物とかも持ってきたから、飲んできなさいね」

「ありがとうございます」



椿からそっと手を離す。

私が泣きそうになっているのに、椿のお母さんは気づいたらしい。

優しく微笑んで、気遣ってくれる。


私はお母さんにぺこりと頭を下げ、部屋を出ようと扉に手をかけた。



「.........ぼ、たん.........」



あぁ、まただ。

また、椿の幻聴だ。

わかっている。

わかっているのに、恋しくて、我慢していた涙が一滴、頬を伝う。



「....ぼた、ん」



あれ?



「椿っ」


2度目の幻聴が聞こえたと思ったら、お母さんの震える声が、背中から聞こえてきた。



「か、あさん......」

「椿............っ」



どうしよう。

体が固まって動けない。

振り返りたいのに。

振り返り、たいのに。