今日は、近道して帰ろうか






「ねぇ、聞いてる?椿」

「え、あ、ごめん。何?」

「だーかーらー。進路!進路の話!椿も地元の大学行くんだよね?」



制服姿に、少し幼い牡丹。

それに、前より顔の距離が近い気がする。


これは夢?



「それにしても、1年生の時から卒業後のことなんて。正直あんまり、ピンと来ないよね」



つまり、今は、高校1年生ってことか......?

戻っ、たのか.....?

本当に......?



まるで夢の中のような感覚。

でも、牡丹は俺の目の前にいて、触れられて、言葉も発する。



夢でもいい、そう思った。


また牡丹のそばにいられる。

それだけで幸せだった。



高校生活は、1度目の時よりも2度目の方があっという間で。


医学部のある大学に入るために、死に物狂いで勉強した。



でも、1度目の過去から大幅に何かを変えてしまうことが正しいのかもわからなくて。

牡丹にも、誰にも、俺が2度目を繰り返していることも、医学部を目指していることも言えなかった。



そして、高校3年の冬も間近な今日。

朝から泣いている牡丹。


どうやら、俺が卒業後に県外に行くことを知ったらしい。



わかってる。

牡丹のために、医学部のある大学に行くべきだと。

そのために過去に戻ったんだから。


だけど、俺は知らない。

俺が離れると知って泣く牡丹を。

1度目では見ていなかったから。

当たり前のように大学も同じだったから。



だから、俺と離れると知って泣くボタンを見て、揺らいだ。


近くにいても、2度目なら気づけるんじゃないかと。

それでもいいんじゃないかって。

それがいけなかったんだと思う。