今日は、近道して帰ろうか







『ねぇ椿、知ってる?』

『知らない』

『まだ何も言ってないんだけど』



不満そうに頬を膨らませる彼女を、愛おしいと思うようになったのはいつからだろう。



『桜は散るって言うでしょ?梅はこぼれる。


椿が散る時は、落ちる、って言うんだよ』



『ふーん。花が散る時言葉?』

『そう!花によって言い方が違うんだって』

『牡丹は?』

『牡丹はね〜』



大学4年の冬。

俺のそばにずっといた彼女は。

まるで、その花が散る時の言葉になぞらえるように。

急激に体調を崩して、この世を去った。



大学4年間、ずっと一緒にいたのに。

気づけなかった。

牡丹の小さな体調の変化に。

彼女が病気に蝕まれてるとも知らずに、俺はただそばにいただけだった。




戻りたい。高校生の頃に。

そしたら勉強して、医大に入って、俺が牡丹の病気を治す。



戻りたい。

戻りたい。

牡丹がいる頃に。

牡丹を失う前に。



戻りたい。



後悔ばかりが募っている。

そばにいたのに、言えなかった。

何も。

自分の気持ち1つ。


もう同じ過ちは繰り返さないから。





戻りたいよ、神様。