今日は、近道して帰ろうか

*





『ねぇ椿、知ってる?』

『知らない』

『まだ何も言ってないんだけど』



不満そうに頬を膨らませる彼女を、愛おしいと思うようになったのはいつからだろう。



『桜は散るって言うでしょ?梅はこぼれる。


椿が散る時は、落ちる、って言うんだよ』



『ふーん。花が散る時言葉?』

『そう!花によって言い方が違うんだって』

『牡丹は?』

『牡丹はね〜』



大学4年の冬。

俺のそばにずっといた彼女は。

まるで、その花が散る時の言葉になぞらえるように。

急激に体調を崩して、この世を去った。



大学4年間、ずっと一緒にいたのに。

気づけなかった。

牡丹の小さな体調の変化に。

彼女が病気に蝕まれてるとも知らずに、俺はただそばにいただけだった。




戻りたい。高校生の頃に。

そしたら勉強して、医大に入って、俺が牡丹の病気を治す。



戻りたい。

戻りたい。

牡丹がいる頃に。

牡丹を失う前に。



戻りたい。



後悔ばかりが募っている。

そばにいたのに、言えなかった。

何も。

自分の気持ち1つ。


もう同じ過ちは繰り返さないから。





戻りたいよ、神様。