今日は、近道して帰ろうか

「牡丹!!」

「わっ、椿」

「廊下でめっちゃ泣いてたって聞いて.......。

どうした?誰かに何かされたのか?!」



突然現れた椿に、私も楓も目を丸くする。

でも、椿はそんなこと気にしてなくて、朝練終わりのジャージ姿のまま、こんな寒いのにほんのり額に汗を浮かべて、心配そうな顔で私に駆け寄った。



「目、真っ赤じゃん。どうしたんだよ」

「こ、これはちょっと.......」

「ちょっとなんだよ?」

「いや、その........」



口篭る私に、真剣な顔の椿。

楓に援助の視線を送っても、なぜかウインクが返ってくる。



.........ていうか、どうしよう。

不謹慎かもしれないけど、私をめっちゃ心配してくれる椿にすごく嬉しいと思ってしまう。



「なぁ、一体誰に何されたんだよ」



不安そうな顔を見て嬉しくなるなんて、やっぱり私は最低だ。



「.....その、椿が卒業したら遠くに行っちゃうって思ったら悲しくて」



嘘じゃないけど、全部を語らない小癪な手まで使ってしまう。



「なんでそれ知って..............親経由か」



いや、もう全然本人の口からなんでけど。

椿のお父さんお母さん、それにうちの父と母、濡れ衣をごめんなさい。



「てか、それでそんな泣いてたの?」

「だって、考えてもいなかったから。椿と離れる未来」

「...................はぁ」



呆れたのか、大きく息を吐いた椿は、


「泣いてた原因は俺か。ごめん」


そう言って、頭を下げた。



「え、いや、椿が謝ることでは.......」


私が勝手に泣き出しただけだし。



「ずっと、言わなきゃと思ってたけど、言えなくて........」


早く伝えなくてごめんな、と椿はまた謝った。