それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 職員たちは、決裁時間に間に合わせるためにメリハリのある仕事をするようになったようで、彼らの業務効率 が上がったというのだ。
 また、だらだらと執務室を訪問されることのなくなったロランの機嫌も以前よりよくなったようで、些細な失敗では怒られなくなったと皆が喜んでいた。
 ちなみに、親切なおじ様に些細な失敗ってなんですかと訊ねたら、

「必要な資料の年を間違えちゃった」

 と自白されて、「それは些細ではないのでは?」と思ったのは秘密である。
 前は人を殺しそうな目で睨まれながら怒られたらしいが、今は虫を見るような眼差しで注意されるだけらしい。
 財務省は大丈夫かと本気で心配になった。



 そんなふうに日中を過ごしているが、夜も変わらずロランとの賭けに臨んでいる。
 彼と結婚して一カ月以上経っているが、その間に月のものが来た。
 つまり、まだミレッラは復讐を諦めなくていい。ホッとするのと同時に、胸の奥になんとも言えないモヤつきが生まれて首を捻る。