それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「礼は言葉より、夜の方で期待してる」

 そっと囁かれた言葉に、つい先ほどの感謝も忘れて彼を睨めつける。

「あなた、そういうところよ」
「ふっ」

 それからは、ミレッラの補佐官としての体面を守るための仕事について教えてもらった。

「具体的な仕事内容は、俺のスケジュール管理と調整だな」
「他には?」
「ない」

 え? と自分の耳を疑う。

「ないって、何も? いいの?」
「ミレッラは仕事をするために俺に協力を仰いだわけじゃないだろう?」
「それはそうだけど……」
「それに、スケジュール管理と調整〝だけ〟だと思っているなら甘いな」

 彼の口角が意地悪く上がる。

「俺のスケジュールはかなり細かく刻まれるし、各課室から上がってくる決裁伺いも――もう見ただろうが――ああやって廊下で人が溜まるのは日常茶飯事だ。しかも国会が始まればもっと渋滞する」