それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「おまえ、その状態で決裁を仰ぐなんて自殺行為だぞ」
「だがすでに一度延ばしてもらった締め切りが今日なんだ」
「だったら見せてみろ。何かわかるかも」
「おお、そうだ。みんなで確認しよう。これ以上犠牲者を増やしてはいかん」

 大の大人がわいわいと集まって、小さな会議が始まってしまった。
 発端の気弱そうな男性は感動のあまり泣いてしまっている。今日の午前中だけで大人が泣くところを二回も目撃してしまったのだが、ロランはいったい彼らに何をしたのだろう。

「――おい」

 するとその時、ロランの執務室の扉から、黒い仮面をした鬼がぬっと姿を現した。

「ここは子どもの遊び場か? 静かにできないならその口縫うぞ」
「「「ひっ。も、申し訳ございませんっ!!」」」
「補佐官、ちょっと来い 」
「え、は、はい」

 手招きされるがままついていくと、入れ替わりで先ほど決裁を仰いでいた職員が出ていった。
 執務室にふたりきりになると、ロランが振り返りながら口を開く。