それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「副長官、お時間よろしいでしょうか」

 リヒトが出ていってすぐ、ノック音が響いた。

「少し待て」

 新たな来訪者にそう告げると、ロランは立ったままだったミレッラに応接用のソファへ座るよう勧めてくれた後、訪問者に入室を許可する。
 ミレッラには何を言っているのか全くわからない話が続き、ひとり目の訪問者が出ていくと、間髪容れずにふたり目の訪問者が扉を叩いた。
 また難しい話をした後、三人目、四人目、五人目と続けざまに人が訪ねてくる。
 まさか……と嫌な予感を覚えてそろりと立ち上がったミレッラは、ロランと訪問者が会話に夢中になっている間に扉の外を覗いてみた。
 すると、廊下にたくさんの人が溜まっていた。各々手には書類を持っており、ロランに用があるのだと言われなくても理解した。

(嘘でしょ……なんなのこれ)

 彼が多忙なのは知っていたけれど、出仕して早々これは酷い。
 ロランへの決裁は全て口頭の説明も含めて行われているようだと察する。だからイメージしたような決裁書類の山が見当たらなかったのだ。