それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「ええ。どういう意味?」
「……あのお人好しめ」

 苦々しい呟きが彼からこぼれ落ちる。どうやらリヒトの真意にロランは気づいたらしい。さすがと言うべきか。

「気にしなくていい。それより切り替えろ。あなたの能力次第では、俺はあなたを屋敷に帰すと言った言葉は本気だからな」
「わかってるわ」

 そこで初めて室内に意識をやったミレッラは、執務室の広さにまず驚いた。
 さすが省内ナンバースリーの地位を持つだけあって、与えられている部屋はなんとも格式高く豪華である。
 申し分ないどころかひとりだと寂しく感じるほどに広く、事務用品はどれもこれも高級そうなものばかり。飾ってある絵画ひとつを取っても、無名の画家が描いたような手抜きはない。

(意外……もっと書類が積み上がっているんだと思ってたのに)

 ここに来るまでの訪問者数を鑑みれば、執務室はどんなに酷い状態なのだろうと身構えていたが、予想を違えて室内はすっきりとしたものだった。
 やはりロランの有能さがここでも光っているのかと思ったけれど、どうやら事情が異なるらしいとすぐに知ることとなる。