それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 部屋の扉が閉まった途端。

「朝からなんの用だ、リヒト」

 人が変わったようにロランが苦言を呈する。
 ロランの方がリヒトよりも身分も年齢も下だが、身内だからこその気安さなのだろう。

「ごめんね。急に訪ねてきたのは謝るから、そんなに睨まないでくれるかな」
「頼むから自分の立場を自覚してくれ。おまえがここに来るのを目撃されると、また面倒な連中が面倒な文句を入れてくるんだぞ。俺に用があるなら呼べって言ってるだろ。何より優先するとも言った」

 するとリヒトが、う~んと困ったような顔で微笑んだ。

「だから呼びたくないんだけどな。それより、紹介してよ。君の奥方」

 ここで突然水を向けられ、心臓がわずかに飛び跳ねる。
 もう何を言っても無駄だとわかっているように、ロランがふうと息を吐いた。

「紹介しよう。俺の妻のミレッラ・ブランデール・オルブライトだ」

 ドレスを着ていないので、ミレッラは紳士と同じ方法で腰を折る。

「初めてご挨拶申し上げます、王太子殿下。ミレッラ・ブランデール・オルブライトです」