それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 やっとロランの執務室に到着した時、扉の前で一際眩しいオーラを放つ男性がいた。

「やあ、ロラン。待ってたよ」

 太陽に負けない笑顔を見せるその人を正面から認識した瞬間、ミレッラは自分の動揺が表情に出ないよう必死にこらえた。
 なぜならその人は、貴族といえども滅多に言葉を交わせることのない、この国の王太子だったからだ。
 王族にしか現れないという珍しい銀の髪と、ブルーサファイアのように深い青の瞳が神秘的な人である。
 これまで夜会などで見かけた機会はあっても、ロランと同じく、別世界の住人だと思っていたような人だ。
 こういう時、ロランがいかに尊い身であるかを思い出す。王族の末席に名を連ねているということは、彼だって王位継承権を持っているという意味なのだから。

(そうよ。このふたり、確か親戚の関係なのよね)

 ちらりと窺ったロランが、にこやかに口角を上げて応えた。

「おはようございます、殿下。殿下をお待たせすることになり申し訳ございません。話は中でお伺いしましょう」
「え、ああ、うん。そうだね」

 半ば強引に王太子の背中を押しながら、ロランが執務室に入っていく。
 王太子がいるなら自分は遠慮した方がいいかと悩んだミレッラだったが、ロランが顎を振ってついてこいとジェスチャーを送ってきたので、大人しく後に続いた。