それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 確かに突然のキスで避けられなかったとはいえ、男性に対して隙を見せてしまったのは事実だ。
 ここは素直に謝っておこうと思ったが、その前にロランが続けた。

「たとえば逆の立場だったらどう思う? 俺があなたの知り合いの女性にキスされたら、あなたはどうだ?」

 知り合いの女性(いとこ)に元婚約者を寝取られた身なので、それはとても想像しやすい喩え話だ。

(そうね、エーゲハルト様がカリーナとそういう関係になったと聞いた時は……)
「――特に何も、思わなかったかしら」
「は?」

 計画が台無しになった悲しみと絶望はあったけれど、エーゲハルト個人に対して何かしらの感情を抱くことはなかった。
 怒りも、悲しみも、嫉妬も、何も。それだけエーゲハルトに興味がなかったともいう。

(でもこれが、ロランだったら……というのを聞いているのよね? ロランがカリーナに?)

 頭の中にその像を結ぼうとしたが、ロランが覆い被さってきたことにより思考を中断せざるを得なくなってしまう。

「まあ、わかってはいたが、まだまだ興味を持ってもらえてはいないらしい」
「ロ、ロラン? 今日はもうやめてくれるって……」
「明日は初出勤だもんな? やめてやるつもりだったんだよ、俺はな?」

 けど、と彼がにっこりと意地の悪い顔で笑う。

「煽ったのはあなただ」

 何が彼の怒りに触れたのかはわからないけれど、もう二度と他の男性の話はしないと誓わされたミレッラである。