それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 性別は男性だが、仕草や口調は女性のようで、本人曰く「かわいいものを愛でていたらこうなった」とのことらしい。
 テーラーは主に紳士服をつくる人だが、彼は女性用の服も多く手がけている。そのため、女性が着る男性用の服を依頼するのに適任だと判断されたらしい。
 名をアンドレ・レニィといい、情熱的な赤い髪と片眼鏡がとても似合う男である。
 いつもはオーダーメイドで服をつくっているらしいけれど――結婚式のドレスも彼がつくったという――今回は急ぎだったので既製品を女性用にアレンジしたものを持って訪ねてきてくれた。
 サイズはロランから聞いたと言うが、念のため問題ないか確認するために試着したところ、その姿を見たアンドレが盛大に嘆きの限りを叫んだというわけだ。

「セレナちゃん、本当にズボンじゃないとだめなのぉ? 襟も? こんなに窮屈に締めちゃうのぉ!?」
「私に言われましてもぉ……! 旦那様がそうしろと……!」
「閣下はどこかしら!? 嫁をもらったからかわいいドレスがつくり放題だぞって言ったのは閣下なのにぃ! キーッ、あんの嘘つきめ!」
「ひぃっ」

 アンドレの鬼の形相にセレナが完全に怯えている。