それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 彼らに嘲笑されることには慣れているため、そんなことで今さら腹を立てたり、傷ついたりするようなミレッラではない。
 けれど、作戦のために契約したはずのエーゲハルトからの裏切りには、さすがにすぐには立ち直れなかった。
 しかも裏切った当の本人は、

「まあそういうことだから、悪いけどミレッラ、君との約束はなかったことにしてくれたまえ」

 と、あっけらかんと事実を認める始末だ。
 彼の瞳には罪悪感も何もなく、叔父たちと同じ嘲りの色しか滲んでいない。
 彼が女好きなのは承知していた。権力にも目がなく、そこを利用して契約を持ちかけたのはミレッラだ。
 だから、今の状況は確かに不思議なものではない。
 特にエーゲハルトの好みの女性が、ミレッラのようなスレンダーな体型ではなく、カリーナのような凹凸のはっきりした体型であると知っているので、納得すらしてしまえる。
 金糸のように細い髪や、ルビーのように赤い瞳、ぷっくらと膨らんだ肉厚な唇から華奢な腕まで、どれをとっても庇護欲のそそる容姿は、エーゲハルトの心を簡単に射貫いただろう。
 それでもカリーナに目移りされないよう、カリーナに会わせないよう注意を払っていたし、万が一に備えて契約書だって交わしたはずだった。