それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「構わないわ。無理を言った自覚はあるもの。後は私の実力次第よ」
「ははっ。それは頼もしいな」

 急に機嫌のよくなった彼に、ミレッラは首を傾げた。
 本当によくわからない男である。仮面の下に、いったいいくつの〝顔〟を隠しているのだろう。
 それでも、彼のおかげで復讐への道が繋がった。


   *


 明日からとうとう叔父の不正の証拠集めができるということで、ミレッラは朝から上機嫌だった。
 朝食を一緒にとった後、ロランはいつもどおり仕事に出掛けていったが、ミレッラは明日からのためにいろいろと準備を始める。
 ロラン曰く、女性の官吏は少ないらしく、特に財務省はほぼ男性で構成されているため、服装はズボンを着用するようにとのお達しだ。
 じゃあ買い物に行かなきゃねと意気込んでいたミレッラを先制して、ロランがすでに仕立屋を手配していると聞いた時には間抜けにも口をぽかんと開けてしまったものだ。
 ロランが有能であるというのは、こういうところからひしひしと伝わってくる。

「あ~ん! このすらりと綺麗なおみ足も、美しい身体のラインも、女性らしい豊かなお胸まで! 何もかも殺した服を着せないといけないなんてッ! 閣下は悪魔よ!」

 ハンカチを握り締めて全力で悔しがっているのは、公爵家お抱えのテーラーだ。