それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 ふに、と彼の唇と自分の唇がくっついた瞬間、心音はピークに達した。
 けれどここで終わりじゃない。
 ロランの求める褒美は、さらに先に進まなければならない。

(っでも、もう無理……!)

 心臓が破裂する前に戦線を離脱しようとした時、ガッと後頭部を押さえられて、ふたつ唇が強く合わさる。
 それからは結局いつものようにロランに翻弄されて、息が苦しくなってきたところで図ったように解放された。

「~~こんなことなら、下っ端でよかったのだけど」

 嫌みったらしく睨むと、彼が眉根を寄せながらふっと笑った。

「残念だが、実はその選択肢は最初からない。俺の目が届かないところに配置するわけないだろ?」
「なっ……じゃあご褒美って」
「もらえるものはもらっておこうと思って。言っただろ? 俺は目的のためなら積極的に仕掛けていくタイプだって。何も夜だけが賭けの場じゃない。こうして〝俺〟に慣れさせた方が、こちらの勝率は上がるんでね」

 なんて計算高い男だろう。やっぱり『鬼官僚』で合っているかもしれない。