それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「クマは薄くなってきたか」
「……!」

 まさか気にしてくれていたのかと、気まずい思いが広がる。
 この男を『鬼官僚』と言い始めたのは、いったい誰なのだろう。血の繋がった親族でさえミレッラのクマなんて気にしなかったのに、夫婦になったとはいえ、血の繋がらない他人である彼の方が気に掛けてくれるなんて、なんという皮肉か。
 こんな甘い『鬼』が、世の中に存在していいわけがない。
 まさか、お世辞か冗談だと思っていた『気に入った』という彼の言葉は、実は本気だったとでも言うのだろうか。

(火傷の痕を受け入れただけで?)

 もしそうなら、それは彼がそれだけ拒絶されてきた過去の裏返しに他ならない。
 ミレッラ自身は、元婚約者のエーゲハルトのおかげで『人は見た目より中身』と学ぶ機会があったけれど――エーゲハルトは見目はよくても性格がだらしない――ロランの周りにはそういう考えの持ち主はいなかったというわけだ。

(……かわいそうな人)

 もし他にミレッラのような考え方を持つ女性がいれば、こんな女に振り回されることもなかっただろうに。
 面倒に巻き込まれることもなく、目的の後継者づくりのためにもっと条件のいい女性を迎え入れられただろう。