それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 利害が一致しただけの相手に対して、随分と優しいことを言うものだなと冷静な頭で思う。

「ロラン」
「あなたは少しも恥じらわないな」
「違うわ。『ミレッラ』よ」
「……ミレッラ」

 ロランの固い手が頬に添えられる。重なる視線に艶めくものを感じて、ミレッラはそっと瞳を動かした。

「今照れるのか」
「だってなんだか……思っていた感じと違ったから」
「どう思っていた?」
「あな――ロランはもっと義務的だと思ったの。不必要なことはしない、みたいな」
「やることだけやって、はい終わりって? それをお望みか?」
「……わからないわ」

 正直に答えると、彼がはっと笑う。
 それはミレッラを馬鹿にしたわけではなく、まるで猫が鏡の中の自分に驚いて飛び跳ねるのを目撃した時のような笑い方だった。おバカなところを慈しむような、そこがかわいいと言うような、そんな笑い方。