それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 彼とは日中はほとんど会えていなかったけれど、夜は賭けのために毎晩会っている。
 だから別に「寂しい」思いなどしていなかったし、ロランもそれをわかっていて口にしているのだろうから、なんて白々しいのだと胡乱げに睨んでやった。

「きゃー! 旦那様ったら大胆ですね! 大丈夫です、このセレナ、もちろん心得ておりますのでしばらくお使いに行って参りますね!」

 脱兎のごとくとは、今のセレナにも当てはまりそうな猛スピードだった。彼女は部屋の片隅で控えていたイーサンの腕を掴むと、彼も一緒に連れていってしまう。
 完全に部屋にふたりきりにされたミレッラは、はあとため息をついた。

「まさかあなたが演技派だとは思わなかったわ」
「演技じゃないかもしれない」
「冗談はその胡散臭い笑みだけにして。それより、何か用があったんでしょう?」

 今のロランは顔の上半分を隠す仮面をしているので、正確に表情を読み取ることは難しい。それでも露わになっている口元は、何かを企むような弧を描いていた。
 腹が立ったので仮面に手を伸ばすと、彼の緑の瞳をじっと見つめる。
 言外に仮面を外していいか訊ねるミレッラに、彼は特段抵抗という抵抗を見せない。
 それを〝許可〟と受けとり、ミレッラはロランの仮面を外した。

「……やっぱり胡散臭い顔をしていたわね」