それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 セレナとイーサンから話を聞いているうちに、どうやら公爵家の人々は、これまで結婚する気配のなかったロランが求婚したことで、ロランがミレッラに惚れて妻にしたのだという勘違いが広がっているらしいと知った。
 否定するメリットもないので沈黙を貫いたけれど、実際の自分たちは『賭けの相手』というあまり褒められたものではない関係でしかない。

(さすがに良心が痛むわね)

 セレナもイーサンも、明るく優しい人だ。
 彼らから純粋な好意を向けられると、罪悪感がちくちく心臓を刺してくるようである。
 それでも、と今朝の手紙を思い浮かべる。

(私は私の大切なもののために、なんだって利用すると決めたのよ)

 ぐっと拳を握って、自分の部屋へと戻ったのだった。



 それからは、まず公爵家に慣れるために奮闘した。
 そのためこの二週間はずっと邸宅内を歩き回ったり、セレナやイーサンから公爵家のことについて聞いて学んだりと、忙しい毎日を送っていた。
 ――そう、新婚とは思えないほどに。

「奥様」

 朝から新聞に目を落としていたミレッラに、セレナの潤んだ瞳が向けられる。