それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 あるいは、叔父の怒りを恐れてミレッラを遠巻きにする使用人もいるが、彼らだって味方というわけではない。
 執務室でないなら応接間だろうと考えたミレッラは、さっそくそちらへ向かって歩き始めた。
 今は夕食前の時間で、叔父が私室にいる可能性もあったが、ミレッラを呼び出したのならその可能性も消える。なぜなら、叔父はミレッラを自分の私室に入れることを極端に嫌っているからだ。
 案の上、応接間から楽しげな声が漏れ聞こえてきた。ダミ声は叔父のもので、若い女性の声はカリーナのものだろう。
 カリーナもいるのかと思うと気が滅入るが、行かないわけにもいかない。

「失礼します」

 ミレッラはノックをして入室すると、「遅い!」という叔父の怒鳴り声が飛んでくるのを覚悟した。
 が、いつもなら必ず飛んでくる罵声が、今日はなぜか飛んでこない。
 むしろ上座のアームチェアに座っている叔父の顔には、機嫌のよさそうな笑みが乗っている。
 そしてそんな叔父の斜め前に、見覚えのある青年が腰掛けていた。