それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 とにかく腹立たしいので、すぐに抱き心地がいいと言わせてみせると、ミレッラは闘志を燃やした。
 やはり全てを食べきることはできなかったが、久々にまともな食事を口にしたと、朝食を終えた頃にはロランへの怒りも忘れていた。
 書き物机に向かい、セレナに用意してもらった紙とペンで手紙を書く。
 急に領地を離れて申し訳ないこと。
 結婚しても志は変わらないこと。
 みんなが幸せを願ってくれたように、自分もみんなの幸せを願っていること。
 最後に封筒に封蝋をしたミレッラは、セレナにイラニア伯爵領の自警団へ届けてもらうようお願いした。
 それからは、セレナと、ロランがミレッラのためにつけたという護衛騎士のイーサン・エルヴィノが、邸宅の案内役を買って出てくれた。

「奥様、僕はよく童顔で舐められますけど、心配しないでくださいね! 剣の腕は歴戦のおっさん並みですから」
「まあ、それは心強いわね」

 くすくすと笑いながら返す。
 本人には申し訳ないことに、確かにちょっと大丈夫かと心配はした。
 焦げ茶色の髪をマッシュヘアに整えた、滑らかなブラウンの瞳が印象的な青年だが、二十五歳だと聞いたわりに十代の少年にしか見えなかったからだ。