それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 テーブルの上に並んだその量に、ミレッラは目をぱちくりとさせた。

「ね、ねえセレナ。これって何人分かしら。もしかしてやっぱり旦那様がいらっしゃるの?」
「いいえ。奥様おひとり分です!」

 とっても元気な返事をされたが、なぜここでそんなに胸を張るのかは謎だ。
 サラダにハムに焼いた卵、ソーセージ。瑞々しい果物に、スープやオムレツ。焼き立ての香り漂うパンは何種類もあって、もう一度確認するためにセレナへ視線を向けたら、彼女がしっかりと頷く。

「こ、公爵家って、すごいのね……」
「それはもう、当家のシェフは一流の腕を持っていますから」

 そういうことを言ったわけではないのだけど、と苦笑したら、セレナもわかっていたのか、その後続けた。

「旦那様が、奥様をもっと太らせろと仰せになったのです。抱き心地がわる――」
「お、おおお奥様っ! それよりどうぞお召し上がりください。ただ無理はせず、残しても問題ないとも旦那様は仰っておりました!」

 慌ててセレナの口を塞ぎながら、昨日までは見事なポーカーフェイスを保っていたメイドのひとりが取り繕うように代弁した。

(なるほど、抱き心地が悪かったのね。……あの男っ)

 苛立ちのままにフォークでソーセージをぶすりと刺す。もちろんマナーの範囲内での八つ当たりだ。