それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「何がおかしいの」
「――ふ、ははっ。もうだめだ。いや、おかしいだろ。今の行為全てがおかしい」

 証明しろとこちらを試してきたのは彼の方なのに、その反応は腑に落ちない。
 貴族の仮面も忘れて不満を訴えるミレッラに、ロランがまた吹きだした。

「ちょっと、失礼よ。あなたが仕掛けたんだから、ちゃんと合格なのかどうか言ってくれないと困るわ」

 すると、彼が意地悪く目を細め、ミレッラの後頭部に手を回した。
 何を思う間もなく引き寄せられ、彼に唇を塞がれる。
 反射的に抵抗しようとした際に開けた口を彼の分厚い舌に割り開かれ、自分のものではない熱に翻弄される。
 息が苦しくなって彼の胸を叩けば、ようやく唇を離してくれた。
 ふっと笑った彼の吐息が、濡れた唇を震わせる。

「思ったよりへたくそだな」
「なっ……最低!」

 思わず出てしまった手を、彼が難なく受け止めてしまう。

「いや、だからいい。慣れている方が腹立たしい」

 ロランはそう言うと、掴んでいたミレッラの手を自分の目元へと誘《いざな》った。火傷の痕に触れさせて、ミレッラがやはり嫌がらないのを確認し、また堪えかねたように笑みをこぼす。

(いったいなんなの、この人? 何がしたいのかしら)