それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「ありがとう。みんなも、私のことより自分たちの生活を第一に考えてね」

 それから町の様子をひと通り見て回ったミレッラは、彼らに見送られて伯爵家へと戻るための道中を歩く。

(やっぱりだんだんと貧困の差が表れ始めていたわ。このままじゃ本当にみんなの生活が……。あの計画を早めに進めないといけないわね)

 実はミレッラは、叔父から伯爵位をどうにかして取り戻せないかと考え、実際に今、とある作戦を実行中だった。
 それというのは、ミレッラが婿を迎えて、ミレッラの夫こそが正当なイラニア伯爵家の後継者だと王家に直談判することだ。
 けれどその作戦が必ずしもうまくいくとは限らないため、領民には話せていない。

(それに言ったら、優しいみんなのことだもの、きっと反対されるわ)

 特に町の大人たちは、ミレッラの幼少の頃からの付き合いであるため、ミレッラを自分の子どものように思ってくれている節がある。

(とにかく消えた男性たちに関する調査と併せて、叔父様には気づかれないようにしないと)

 やがて伯爵邸に着くと、ミレッラは裏門から入り屋根裏の自分の部屋へ足を向けた。
 しかしその途中で、使用人に声を掛けられる。