それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「先に言っておくが、何を考えていたとしても無駄だ。俺から情報を聞き出すことも、ましてや非力なあなたが俺を殺すなんて、到底無理な話だ」

 その時、彼が急に身体を屈ませた。抵抗する間もなく横抱きにされて、地面から足が浮いた不安定さに驚いて思わず彼の着ているバスローブを強く掴む。
 やや乱暴にベッドの上に下ろされると、すぐさま彼が覆い被さってきた。

「叔父に何を吹き込まれてきた?」
「……え?」
「どうせあの豚がなんか言ったんだろ? あの男は俺を嫌う貴族のひとりだ。今回の縁談に姪を差しだすなんて、何か企んでると思うのが普通だろ?」

 ミレッラはすっと目を細める。

「そう思っていながら、なぜ受けたの?」

 そちらのほうこそ何か企んでいるのではないか、そんな意味を込めて自分を組み敷く男に訊ねた。
 彼は純粋なセレナと違って言葉の裏を読み取ったようで、挑発するようにゆっくりと首を傾ける。

「あの頭の足りない男が何を画策したところで、俺が足を掬われるとは思えなかったからだ。それに、あの男の娘でないのもよかった。後継者をつくるためとはいえ、俺だって誰でもいいわけではないんでね。浪費癖のある女はお断りだ」