それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 閨については、ミレッラも知識だけはある。
 たまにエーゲハルトが勝手に興奮して腰を押しつけてくることもあったので、男性特有の器官についても全くの未知ではない。まあ、そういう時はさりげなく逃げていたので実際に目にしたことはないけれど。

(お母様が生前言っていたわね。殿方に任せなさいって。あと、痛みは免れないとも)

 正直に言って、痛みには慣れている。叔父にぶたれてきた経験がそうさせるからだ。
 だから不安に思うのはそこではない。誰かに『身を委ねる』という行為自体が不安なのだ。何をされるか詳しいことがわからないから、過度に緊張してしまう。
 しかし、無情にも〝その時〟はやってくる。
 ミレッラの寝室はカーテンが閉められ、最低限の明かりしか灯されていない。
 立派な天蓋から幕が下りる大きなベッドの上には、初夜のための演出か、深紅の薔薇の花びらが散っていた。
 この妙に照れる空間でひとりロランを待つのが耐えられなくなって、ミレッラは腰掛けていたベッドの縁から立ち上がろうとした。
 が、ちょうどその時叩扉《こうひ》の音がして、心臓と共に肩が跳ねる。
 ミレッラが応えると、扉からバスローブ一枚を羽織っただけのロランが現れた。やはり仮面は常に着けているのか、こんなときでも外していない。