それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

(こ、心の準備がまだなのだけど。それに、結局叔父様の力加減がいい加減だったせいで、蹴られたお腹にまだ痣が残ってるのよね。指摘されると面倒だわ)

 湯船に浸かりながら髪を洗われていたミレッラは、さりげなく痣を隠しつつ、口を開く。

「さすが公爵家ね。湯加減も洗髪もとても気持ちいいわ。せっかくだから、もう少し堪能したいのだけど……」
「光栄です。ですが本日はお時間がございませんので、次の機会にいたしましょう」
「そ、そうね」

 やっぱりそうなるわよねと、セレナと違って淡々と仕事をこなすメイドに内心で肩を落とす。
 こちらのメイドの方がまさにミレッラの想像していた『公爵家のメイド』という感じで、年もセレナより上に見えるが、自分に彼女が主担当で付いた理由はなんだったのだろうとふと思う。
 入浴が終わると全身のマッサージが始まり、柑橘系のオイルを熱心に塗り込められる。
 それは戻ってきたセレナが担当してくれて、さすがに隠せなかった痣を見られたが、一瞬だけ反応されたものの特に言及はされなかった。
 そして意外にも彼女の手が心地好く、寝不足続きのせいで眠ってしまいそうになった。
 いや、いっそ本当に眠れたらよかったのかもしれない。