それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「奥様。この部屋の家具や内装が気に入らなければ好きなように変えていいと旦那様から仰せつかっておりますので、私に遠慮なくお申しつけくださいませね。それで奥様、ここは前室となりますが、向かって左が浴室でございます。奥様の寝室はその逆側にございますが、旦那様とは別室ですのでご承知おきください。ここまでで何かご質問等はございますか、奥様」

 奥様、奥様と、セレナが目を輝かせながら連呼する。
 本人の申告通り、よほどその呼称を使いたかったらしい。夢が叶って嬉しいと、彼女の全身から喜びのオーラが滲みでていた。
 その眩いほどの純粋さにわずかに顔を逸らしながら、ミレッラは一応訊ねた。

「私、結婚式がこんなに早くて驚いたのだけど、旦那様はそれほど私を歓迎してくださっていると受けとっていいのかしら?」

 今の言葉を貴族流に訳すと「来てすぐ式なんて聞いてないんだけど」と嫌みをぶつけたことになるが、どうやらセレナは額面通り受けとったようだ。
 彼女がミレッラを労るために、紅茶を淹れながら答えてくれる。

「そうですよね、驚きましたよね。私たちもさすがに……とお止めしたのですが、旦那様が『どのみち結婚するなら早く終わらせるほうがいいだろ』と仰いまして」