それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

(なんだか動く銅像みたいね……)

 あまりにも感情が見えてこないと、無機物を相手にしているようで少しだけ不気味だ。
 当人たち以外の参列者が誰もいない結婚式がつつがなく終わると、待ち構えていたようにセレナ含めたメイドたちがミレッラを囲った。
 そして忙しなくまたどこかへ連れていかれそうになり、ロランへ挨拶すらできずに教会を出る。といっても、ロラン自身も終わった瞬間にもう用などないと言わんばかりの態度で歩きだしていたけれど。

(いったいなんなのよ、もう!)

 ここまで予想外の連続だと幸先が不安でしかない。
 本当に自分は爵位を取り返せるのだろうかと、珍しく弱気にもなる。
 ミレッラがあてがわれた部屋は、代々リステア公爵夫人が使用する、日当たりのいい部屋だった。
 先ほどは結婚式の支度のせいで満足に見られていなかった内装を、ようやくじっくりと観察できる。
 公爵家の権威を示すような華美さはなく、機能的で、しかし家具一つをとってもディテールの凝った高級品であることが窺い知れる物ばかりが揃っていた。
 着替えを終えて促されるまま腰を下ろした猫脚のソファだって、月桂樹をモチーフに精緻な刺繍が施されており、趣味のよさが窺える。
 全体的に淡いオレンジ色と白で統一された空間は、温かみを感じられて居心地がいい。