それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 そのせいで部屋の内装に何かを思う暇もなく、なぜかサイズぴったりな青のドレスにぞっとする隙もなく、あっという間に敷地内にある教会の扉の前に立たされていた。
 小さいとはいえ敷地内に教会があることも驚きだが、やはりそれを質問する機会などなく、困惑のままに荘厳な空気を纏う扉が開かれた。
 その瞬間、パイプオルガンの音が全身を叩く。今から行われるのは本当に結婚式なのねと実感させられて、ミレッラはさらに戸惑いを隠せない。
 元婚約者が堂々と他の女《いとこ》の腰に腕を回していても動揺しなかったくらい大抵のことには驚かないミレッラだが、さすがにこのスピード結婚式には頭が追いつかなかった。
 ――が、その動揺も、赤い絨毯の先に佇む男を視界に入れた途端、吹き飛んでしまう。
 ミレッラのドレスの色と揃えたような濃紺色の礼装をした男は、遠目からでもその姿勢のよさが窺える。
 ミレッラのドレスには黒のレースが付いていてアクセントになっているが、男の顔半分を覆う黒い仮面が同じようなアクセントの役割を果たしていて、そこまで計算されて作られたのだろうかと呆然と思う。
 ステンドグラスから漏れる日差しが、なんとも神秘的だった。それに照らされた彼のあまりの神々しさには、思わず息を呑んでいた。