それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「いやまあ、確かにそうだが、そうじゃなくて」

 ミレッラがわざと言っているのに気付いているはずなのに、彼が素直に振り回されてくれる。
 こんなに愛おしい(ひと)と出会えたことに関しては、ある意味叔父とカリーナに感謝しなければならないかもしれない。

「わかってるわ。寝室で、でしょう?」
「……そこまでは言っていないが、その場合は覚悟しておけよ」

 ロランが拗ねたように言う。
 この人をよく揶揄うエイベルの気持ちが、少しだけわかったような気がした。
 まだ笑っていたら、腰に回るロランの手にぐっと力が入る。
 見上げた彼がまだ拗ねているような、あるいは不安そうな顔をしていたので、ミレッラは首を傾げた。

「ロラン? どうしたの」

 馬車までもう少し。ふたりきりの時間はまた少しお預けとなる。

「いや、本当は少し、ここに連れてくるのは不安だったから」
「どうして?」
「ミレッラは領民を大切にしていただろう? ここに戻ってきて、万が一やっぱり残りたいと言われたら――残るために俺と離婚して、エイベルと結婚するなんて言われたらと」
「そんなこと思ってたの!?」

 考えたこともない想像をされていて、さすがのミレッラも大きな声をあげてしまった。「万が一な。ミレッラは最初、領民のためにエーゲハルト・ステイブルトンと結婚しようとしていたし」

「うっ」

 それを言われると言い返せない。