それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

「大丈夫よ。みんな、これまでありがとう。これからはエイベル殿下と一緒に頑張ってね」

 領民たちが互いに顔を見合わせる。頷き合って、最後、一斉にミレッラへと頭を下げた。
 そうして、邸宅に向かっているであろうエイベルの後ろに続いた。
 そんな彼らの背中を、見えなくなるまで見送った。
 一陣の風が髪をさらう。
 静かになった広場を少しだけ寂しく思っていたら、ロランが額に口づけを落とした。

「俺たちは俺たちの家に帰ろうか、ミレッラ」
「ふふ、そうね。帰りたいわ、あなたと私の家に」

 ふたりはもう、賭けなんてなくても一緒にいられる。
 賭けがなくても別れない選択をした。
 今度こそ、本当の夫婦として。

「ねえ、ロラン」
「ん?」

 先に馬車に戻ったリヒトを追いながら、ミレッラはふたりきりのうちに伝えたかったことを口にする。

「私を愛してくれて、ありがとう。こんなに晴れやかな気持ちでまたここに来られたのは、あなたのおかげよ。復讐ばかりであなたを傷つけてしまったかもしれない私のこと、見捨てずにいてくれたのも感謝してるわ」

 彼には伝えたい感謝(おもい)がたくさんある。こういうのを改まって口にする照れくささはあるけれど、それでも、彼には知っていてほしいから。

「だから、そういうかわいいことはふたりきりの時に……」
「あら。今はふたりきりよ?」