それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 そんな光景を微笑ましく眺めていた時、リヒトが畏まったように咳払いした。

「さて、じゃあもうひとつの本題に入らせてもらおうかな。すでに知っての通り、ここはもう『イラニア伯爵領』ではなくなり、王家の所有となった。そこで新しい領主を紹介する。――エイベル」
「はいはーい。僕が今日から新しくここの領主になる、エイベル・H・オルグレンだよ。そしてここは新しく『オールディス公爵領』になるから、よろしくね~!」

 王族なのにとても砕けた挨拶に、領民たちが揃ってぽかんとしていた。
 そう、爵位を返還した後の問題として、誰がこの領地を治めるかというのはすぐに話題に上った。
 ミレッラとしてはそれによって領民の未来が変わるため、口を出すことはできずとも、せめて見届けたいと思っていたのだ。
 そして今回リヒトが指名したのが、自分の末の弟であるエイベルだった。
 彼のことはほとんど知らないが、ロランが信頼しているうちのひとりであることは知っていたので、この決定にどれほど安心したことか。

「こ、公爵領、ですか!? ここが!?」
「そうだよ。僕こう見えてやり手だから、安心してね! それに兄様みたいな存在のロランの奥さんが大切にしてたところだからね、僕がちゃ~んと豊かにしてあげるから、みんなついておいで!」
「え!? あ、えっと」

 母よりも破天荒な王子に、領民たちが戸惑いながらミレッラへ視線を寄越してくる。
 助けを求めているようだが、これからはもう、ミレッラではなく、エイベルがここの領主なのだ。