それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 ミレッラの様子に気付いたリーダーが、朗らかに笑う。

「ミレッラ様のお父様とお母様がお好きだった花も入れてみたんです」

 目頭にぐっと力を入れた。懐かしい。白い薔薇は、特に母が好きだった。
 別にこれといって理由があるわけではなく、どうして好きなのと訊ねたミレッラに、母は『だってかわいいでしょう?』と理由にならないような答えを返してきたものだ。
 それが破天荒な母らしくて、父と一緒に笑った思い出。

「ありがとう。大切にするわ」

 花束をつぶさないよう抱きしめると、ロランが頭を撫でてくれた。きっと彼には泣きそうになっていることなんてお見通しなのだろう。
 何度も挫けそうになった。どうすれば爵位を取り戻せるのか、先が真っ暗になって絶望しかけたこともあった。
 それでも諦めなくてよかったと、この瞬間、強く思った。
 優しい眼差しでミレッラを見つめているロランへ、思いの丈を瞳に乗せて微笑む。

「ありがとう、ロラン。あなたに出会えて私、幸せだわ」
「っ……」

 ロランの目元がほんのりと赤く染まる。

「そう言ってもらえて嬉しいが……そういうかわいいことは、ふたりきりの時に頼む」
「襲っちゃうから?」
「なっ……殿下!」

 ぼそっと口を挟んだエイベルに、ロランが照れ隠しで怒る。