それでは旦那様、私と賭けをいたしましょう

 だから、自分よりずっと家格が上の公爵家へ嫁ぐことになり実は緊張していて、この親子のやりとりのおかげでそれが少しでも解《ほぐ》れたなんて、親子には知る由もない。

(主人が『鬼』だもの。使用人も厳格で、歓迎されていなかったらどうしようかと不安だったけれど、接しやすくて助かったわ)

 セレナに感謝だ。

「これからよろしくお願いね、セレナ」
「はい! 今日の結婚式が終わりましたら『奥様』と呼ばせていただきますね。憧れの『奥様』呼び、楽しみです!」
「ふふ」

 優雅に微笑みながらも、ミレッラは「なんですって?」と内心で固まっていた。

(ちょっと待って、結婚式?)

 そんな話は聞いていない。いや、そのためにここに来たのだからいずれはするものではあるけれど、それが『今日』だなんてひと言も聞いていない。
 しかし状況を訊ねる前に用意された部屋に到着してしまい、中に足を一歩踏み入れた瞬間たくさんのメイドに出迎えられ、ミレッラはあれよあれよと『支度』をさせられる羽目になってしまった。